病院長あいさつ
病院長 朴 成和

令和7年4月より東京大学医科学研究所附属病院の第24代院長を拝命いたしましたので、ご挨拶申し上げます。
東京大学医科学研究所の歴史は古く、明治25年に北里柴三郎博士を初代所長として伝染病研究所が設立され、明治27年には伝染病研究所附属病室が設置されたのが医科学研究所附属病院の始まりであり、130年を超える歴史を有しています。昭和42年に医科学研究所への改組に伴って現在の名称となりました。
国内唯一の国立大学の研究所附属病院である当院の使命は難病の克服であり、最先端の科学技術と知見を用いて革新的医療を開発し、社会実装することを目指しています。古くは、伝染病の原因検査、予防治療法の研究、血清痘苗の製造に始まり、近年では、腎臓などの移植手術、骨髄移植、AIDS診療などで日本をリードし、現在も、臍帯血移植用の臍帯血バンク、遺伝子治療用のウイルスベクターの製造とそれを用いたがん治療、全ゲノムシークエンス(遺伝子検査)によるゲノム医療など、最新の治療を行っております。また、治験などの新規薬剤の開発だけでなく、研究グループに参加し他施設と共同して既存薬を使ってより効果の期待できる治療の臨床試験も行っております。さらに、副作用を軽減するための支持療法の臨床試験を立案・開始しております。これからも、医科研病院の本来の使命を忘れることなく、疾患や病態に応じた最新の医療を開発・提供するように努力したいと思っております。
言うまでもなく、このような研究的治療も日常診療がベースであり、標準治療を精密・安全に行うことが極めて重要であると認識して日常診療を実施しております。病院規模としては122床と大きくありませんが、小回りのきく診療科間の連携およびそれぞれの役割と責任を意識した多職種からなるチーム医療を行っていると自負しております。その中で、当院で伝統的に培われてきた研究的なマインドは、「今よりも少しでもいい医療を行い、患者さんを少しでもよくしてさし上げたい」、「標準治療がなくなった後でも何らかの治療をしてさし上げたい」という思いにつながっており、個々の患者さんの様々な問題に対して、個別に工夫を考案・提供するように努力しております。受診していただいた患者さんの困っていらっしゃることや満たされていない要望(Unmet Needs)を少しでも解決できるように努めて行きたいと思っております。